高田郁文化財団

この一冊この一冊

一冊入魂

双葉社 酒井正浩

魂の一行詩

小・中学生時代は野球少年で「一球入魂」、高校・大学時代は格闘技にハマり「押忍・大和魂」。

22歳で出版営業に携わり四半世紀。精神論、気合い、根性、体力だけで生きてきてしまった私が選ぶこの1冊は、「魂の一行詩」(角川春樹:著 文学の森 刊)

子供のころから定期講読していた漫画雑誌や格闘技雑誌、たくさんの小説やコミックスと出会ってきたが、初めて俳句集を購入したのは社会人になってから。

1ページに2行!?

衝撃的な出逢いだったが、その奥の深さを少しずつ知ることになる。

初めて句集を購入してから数年後の2006年、縁あって尾道大学客員教授に就任された、角川春樹さんの講義を受ける機会を頂いた。

(角川春樹さんは俳句界でも、とても凄い御方なのです!)

テーマは「魂の一行詩」

「生涯不良」を公言している方の講義で、学生たちが皆不良になってしまわないか不安だったが、経営者、映画監督・プロデューサー、そして俳人としての熱い講義が1年間続いた。

角川春樹さんは、「『魂の一行詩』とは「いのち」と「たましひ」を詠う一行の現代抒情詩のことである。季語のないものも受け入れ、エネルギーを溢れさせ、正岡子規以来の俳句革新運動を提唱する。」と言い、ただ、俳句を否定しているわけではなく、「秀れた俳句は秀れた一行詩でもある」とも言っている。

ちょっと話は逸れるが、そんな春樹さんがプロデュースする、シリーズ<にほんの詩集>(全12冊)が順次刊行されるらしい。昭和40年代に「日本の詩集」という全集を大ヒットさせた春樹さんが、令和の世に放つ詩集シリーズ!全巻発売になったら、11月1日の「本の日」にでも娘たちにプレゼントしようと思っている。

さて話を戻そう。

講義を受け一行詩の創作にかかるが、これがまた難しい・・・(私だけ!?笑)

文章を書く方が楽かもしれないと思うほどだった。

私が詠んだ句など恥ずかしすぎて出せないが、私が大好きな句に、十数年前、角川春樹さんが書店経営者親子に贈った句がある。

当時の社長に、

尾道にひとりの漢(おとこ)花得たり

息子さんの社長就任に、

  まっすぐにまっすぐに翔べ秋の鷹

私と同年代のこの書店経営者は難局の時代、この句の通り、まっすぐに突き進んでおられる。

「魂の一行詩は短詩型の『異種格闘技戦』であるから、詩、短歌、俳句、川柳、作家、それぞれの分野の方々、そして一般読者の方々も是非一緒のステージに上がられることを望む」 「一行詩は作者の魂と読者の魂が共振れすることが最も重要なこと」と講義は続く。

私たちは、作家の方々が「魂を込めて書き上げた小説や漫画」を「魂を込めて読む、共振れする」、出版社としては「魂を込めて読者へお届けする」ということに繋がる。

作家の先生方が書き上げた1冊、1頁、1行、1文字1文字に魂が込められている。

それを忘れてはいけないと、角川春樹さんには教えられた。

今勤めている双葉社の社長が、昔から事あるごとに常々言う言葉は「一冊入魂」である。

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