高田郁文化財団

この一冊この一冊

髙田郁をはじめ書店員さんなど本に関わる皆さんが選ぶ「一冊」をリレー形式で紹介いたします

大学生になった時、突然ポツンと一人になった。学校に知り合いが一人もいない、そんな環境に身を置くのは初めての経験だった。18歳。現在ならもう大人とみなされるような歳になって「友達ってどうやって作るんだっけ?」と、当時の私は戸惑っていたのだ。それまでは「笑いが最優先」みたいに生きてきた私にとって、周りの …続きを読む

 財務省によりますと、国債とか借入金とか、その他いろいろ合わせますと、日本の、いわゆる”国の借金”は、2024年3月末の時点で1300兆円近くになるそうで。(2024年5月10日付のNHKのニュースサイトより)  国民ひとりあたま1000万円超の借金を背負う国などという言い方もあり、税収はまったく足 …続きを読む

「この一冊」いろいろ思い浮かべながら考えましたが、記憶にある最初に出会った本にしました。それは安野光雅「ふしぎなえ」です。多分自分で選んだのではなく母の選書だと思います。本当にタイトル通りふしぎな絵なんです。階段に上がっていると思っていたら上がれてない、アパートの部屋の壁と思っていたら違う方向から見 …続きを読む

横山秀夫さんが書く文章や言葉は、きっと何度も何度も推敲されていて、著者が真正面から物語に向き合っていることが読者にも伝わる、壮絶ななにかがある。以前からその「なにか」を受けとりながらも、ただぼうっと“すごい”としか表すことができなかったのだけれど、『ノースライト』を読んだとき、身体の奥から、底の底か …続きを読む

私が初めて自身のお小遣いで文庫本を買ったのは高校2年生のときです。それまで漫画の本ばかり読んでいて、活字の本は読書感想文の宿題以外は読んだことがなかったと思います。地元高槻の公立高校に通っていた私の移動手段はいつも自転車。自転車に乗って駅前に出て洋服を見たり、レンタルCD屋に行ったりしていました。高 …続きを読む

あなたの最初の本の記憶はどんな作品ですか?私が覚えている、初めての本との出会いは保育園年少組の時の読み聞かせでした。ン十年以上前の子どもの頃の記憶なんて、今となってはほぼないに等しいのですが、この時だけはなぜだか鮮明に覚えているのです。先生が前にいて、その正面に私含め園児が並んでいて、たぶん私は先生 …続きを読む

文筆業、ナレーター、国語科の先生…小学4年生から夢を見、そして叶わなかった「なりたかった職業」の順位。家庭の事情で諦め、せめて「国語科系職業」をと書店員になりました。最初に入社した書店で雑誌担当になり、女性誌の表紙で季節やトレンドを先取りし、一途に本好きな先輩方に囲まれて、書店の仕事が少しずつ楽しく …続きを読む

昭和の時代、私が住んでいた町にも、自転車で行ける範囲に、多くの書店があった。部活動で活躍するクラスメイトを尻目に学校から帰る。カギっ子と呼ばれた私の居場所はあちこちの書店だった。お気に入りは、町で一番大きな精文館書店。音楽や映画、自動車やアニメ、思春期の男の子が興味を持つような雑誌まで、自分の知らな …続きを読む

金木犀の香りを運ぶやわらかな風、  黄金色の稲穂を波打たせる風、   ポートタワーが見える波止場をわたる風、 どの風もぼくは好きだ。 雲・空・景色と一体となって心の中に残っている。 10代だった頃、深夜放送のラジオから、はっぴいえんどの「風をあつめて」が流れていた。 「風をあつめて」というフレーズが …続きを読む

『孤立』は寂しいが『孤独』でいることは決して悪いことではない。 「1人で遊ぶこと」や「孤独でいること」が寂しくないか?と言ってくる人がよくいるが、1人の時間を過ごすことの”ありがたみ”や奥深さを知らないことは、人としての浅さを露呈することだと個人的には思っている。が、特にそれに言及するつもりはない。 …続きを読む

私が幼少の頃、アニメのキャラクターの絵を描いたビニール靴が大流行していた ビニール靴は男の子主人公のキャラクターはブルー、女の子主人公のキャラクターはピンクと決まっていた。 私が好きだった海のトリトンはブルー 買ってほしいとおねだりした時に母から返ってきた言葉は、ブルーだから男の子ものでしょうという …続きを読む

この作品のゲラを読んだ感想は、「えらいパワフルな新人が出てきたもんやな」だ。 新潮社が「女による女の為のR-18文学賞」受賞作として鳴物入りで、送り出した宮島未奈著の青春小説である。 ゲラが送られてきた理由は、小説の中に弊社「ふたば書房」が出てくるからだ。出版社から、お名前を出していいですか?と確認 …続きを読む