高田郁文化財団

この一冊この一冊

髙田郁をはじめ書店員さんなど本に関わる皆さんが選ぶ「一冊」をリレー形式で紹介いたします

 45年勤務した本屋を退職して3年が過ぎた。もう一生をかけても読み切れないほどの本が書棚にはある。無造作に並べられた本を眺めては時には暇に任せて色々と整理してみる。著者別や内容別や判型を揃えたりと、思いついたように整理を始めるのは本屋勤めが長かったサガかも知れない。2024年暮れも押し迫ったある日、 …続きを読む

“1冊の本と出合うことで、自分の中で何がどう変わったか、どのような影響を受けたかを紹介する”というのが「この1冊」の主旨だそうだ。父親の職業柄、幼いころから常に本が身近にあったのだから、いくらでも書けるだろうと思ったが、これがなかなか難しい。「この1冊」に影響を受けたというよりは、川の流れが徐々に岸 …続きを読む

思い返せば本に関わる時間をずっと過ごしていました。家の近くにある本屋さんによく訪れて、とにかく店をぐるぐるまわって過ごしていたように思います。また、小学校は図書委員や新聞委員。中学生だったか、高校生でも図書委員。とにかく文字に関わり続け、そして現在は書店員として働いています。 どうして小さいときから …続きを読む

 1冊の本で人生は変わる。そんな本との偶然の出会いがあると私は信じている。  本を読まない子どもだった。読書感想文は、TSUTAYAで映画をレンタルしてなんとか書いた。大学に入学しても変わらず、猫の額ほどのキャンパスでサークル活動という名の遊びに全力だった。  そんな私が本を読むようになったのは、m …続きを読む

 子どもの頃、友達と遊んだり習い事に通うなど、それなりに忙しく過ごしてはいたが、読書にはいくらでも費やせるほど、私の時間はたっぷりあった。年齢によっていくつかのマイブームはあったが、記憶をたどってみると最初に惹かれたのは外国の民話・神話や冒険(旅)物語だったように思う。ことにお気に入りだったのは、ロ …続きを読む

大学生になった時、突然ポツンと一人になった。学校に知り合いが一人もいない、そんな環境に身を置くのは初めての経験だった。18歳。現在ならもう大人とみなされるような歳になって「友達ってどうやって作るんだっけ?」と、当時の私は戸惑っていたのだ。それまでは「笑いが最優先」みたいに生きてきた私にとって、周りの …続きを読む

 財務省によりますと、国債とか借入金とか、その他いろいろ合わせますと、日本の、いわゆる”国の借金”は、2024年3月末の時点で1300兆円近くになるそうで。(2024年5月10日付のNHKのニュースサイトより)  国民ひとりあたま1000万円超の借金を背負う国などという言い方もあり、税収はまったく足 …続きを読む

「この一冊」いろいろ思い浮かべながら考えましたが、記憶にある最初に出会った本にしました。それは安野光雅「ふしぎなえ」です。多分自分で選んだのではなく母の選書だと思います。本当にタイトル通りふしぎな絵なんです。階段に上がっていると思っていたら上がれてない、アパートの部屋の壁と思っていたら違う方向から見 …続きを読む

横山秀夫さんが書く文章や言葉は、きっと何度も何度も推敲されていて、著者が真正面から物語に向き合っていることが読者にも伝わる、壮絶ななにかがある。以前からその「なにか」を受けとりながらも、ただぼうっと“すごい”としか表すことができなかったのだけれど、『ノースライト』を読んだとき、身体の奥から、底の底か …続きを読む

私が初めて自身のお小遣いで文庫本を買ったのは高校2年生のときです。それまで漫画の本ばかり読んでいて、活字の本は読書感想文の宿題以外は読んだことがなかったと思います。地元高槻の公立高校に通っていた私の移動手段はいつも自転車。自転車に乗って駅前に出て洋服を見たり、レンタルCD屋に行ったりしていました。高 …続きを読む

あなたの最初の本の記憶はどんな作品ですか?私が覚えている、初めての本との出会いは保育園年少組の時の読み聞かせでした。ン十年以上前の子どもの頃の記憶なんて、今となってはほぼないに等しいのですが、この時だけはなぜだか鮮明に覚えているのです。先生が前にいて、その正面に私含め園児が並んでいて、たぶん私は先生 …続きを読む

文筆業、ナレーター、国語科の先生…小学4年生から夢を見、そして叶わなかった「なりたかった職業」の順位。家庭の事情で諦め、せめて「国語科系職業」をと書店員になりました。最初に入社した書店で雑誌担当になり、女性誌の表紙で季節やトレンドを先取りし、一途に本好きな先輩方に囲まれて、書店の仕事が少しずつ楽しく …続きを読む