いのちを考える
ペンネーム・本屋の娘

私の母は86歳。今でも電車を乗り継ぎ1時間以上かけて、職場である本屋に通っている。父と母が50年前に作った本屋。父が他界したあと母が引き継ぎ、そして昨年私が引き継いだ。妹も一緒に働いており、スタッフにも恵まれなんとか営業を続けている。
母には本来ならば好きな時間に起きて、好きなことをしてゆっくり過ごしてほしいのであるが、いろんな面でまだまだ母には本屋に通い続けてもらいたい。
母に会いに来るお客さんもいる。会話を楽しみ、お互い元気でいましょうね、と言って帰って行かれる。
しかし、いずれ本屋に出てこなくなる日がやってくるだろう。
それを考えると不安でいっぱいになる。
今開催している関西万博の中に「いのちの未来」というパビリオンがある。
ここでは人型ロボットの研究者である石黒浩さんが「いのちを拡げる」というテーマにした展示を手掛けている。
AI(人工知能)技術が発達し、ある人の記憶を残したり、その人とやりとりするように会話したりすることは、すでに可能になっているそうだ。
アンドロイドと共存する世界がいずれ来るのでしょうか。なんだかアンドロイドに人間が支配されそうで怖いですけどね。
人が死を選ぶか、アンドロイドとなり永遠のいのちを選ぶかを選択できる世界がやってくるのでしょうか。
そこで思い出したのがカズオ・イシグロさんの『クララとお日さま』という小説だ。
イシグロ繋がり(笑)
この物語の語り手はアンドロイドのクララという名のAF(アーティフィシャル・フレンド/人工親友)である。AFは人間の子供の遊び相手や話し相手になるために開発された人型ロボットである。
クララは、病弱なジョージーという女の子のためにお母さんが購入したジョージーの親友になってくれるアンドロイド。
AFのクララはとても優秀で学習能力もあり、喜びや悲しみもわかる人間よりも人間らしいアンドロイドである。
そしてクララは病弱なジョージーの為に尽くしきり、ジョージーが病気を克服するのだが、ジョージーがクララを必要としなくなったとき、最後には捨てられる、という悲しい運命にあるのだ。クララ自身は幸せだったようだが。
この物語では、アンドロイドにも死ではない最後が待っていた。
この本はいのちのありかたを考えさせられる一冊である。
AIと人間といのち、未来を考える永遠のテーマだと思う。
母のアンドロイドを作ってほしいとは思わないが、いつまでも元気で長生きしてほしいと切に願う。
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自分は変だと悩んでいた僕が「一人じゃないんだ」と救われた一冊
