山間の集落に本屋をつくるということ
本と宿こうね 大髙竜亮

300人が暮らす小さな山間の集落に、古民家を改修して古書店カフェを昨年オープンした。離れには一棟貸しの宿もある。場所は高知県土佐郡土佐町というところ。最寄り駅まで車で40分、目ぼしい観光地と言えば大きなダムが1つあるだけという、中山間地域と呼ばれる林業と農業が基幹産業の片田舎だ。
高知の市街地から2年前、この場所に移住した。山の展望が素晴らしいこと、10年以上空き家だった物件を思う存分手直しできることが決め手だった。改修作業は集落のたくさんの住民が力を貸してくれた。町の中心からも離れた小さな集落ながら、人のつながりの太さは都市部の暮らしでは決して味わうことができないものだ。毎年数名の移住者があり、それを歓迎する土壌があってとても暮らしやすい。
しかし、どこの地方でも直面している人口減少には歯止めがかからない。何をやるにしても「担い手不足」という言葉が付きまとうのが現実だ。ゆでガエルにならないための取り組みは絵に描くだけではなく、形にしていくことが急務となっている。
今はまだ、頻繁におきゃく(飲み会のこと)があり、夏のお祭りも盛大に開催されている。刹那的には楽しい。そこに、愁いを杞憂に変える将来への可能性という色を加えることができるのなら…。
土佐町を貫く与作国道と呼ばれる439号線を東に向かうと徳島市へ通じる。地域創世の取り組みのモデルと言われる徳島県神山町があるのはその途中。同じ中山間地域、人口減少が進み、消滅可能性の極めて高い町の全国20位に位置づけられていたところだ。そんな町へ移住者が続々と押し寄せ、地元住民や行政と三位一体となって進化をし続けているという。
「創造的過疎」。人口が減っても豊かな未来をつくること。壮大な言葉だが、神山町の歩んでいる日常には、「いろんな人が何かを始めようとしている」姿がある。町に提供できる仕事がなければ逆指名で手に職を持つ人に来てもらう。IT企業のサテライトオフィスを誘致して雇用を生み出す。農業の少量生産、少量消費をつなぐ「フードハブ」を作る。地元の木で地元の大工が若い世代に技術を伝承しながら集合住宅を建築する。地域と関係の薄かった農業高校を地元のリーダーを育成する学校に変える。
取り組みの事例を挙げればキリがない。決して綿密な計画があったわけではないというが、「土壌づくり」が結果としてワクワクする未来を創る多様性を生んだ神山町。過疎の進んでいた同じ四国の山間の町には、私の暮らす高知県土佐町にも可能性をもたらす眩しいほどの挑戦が次々に生まれている。
新しい拠点を立ち上げて半年。地元の住民が集い、遠い市街地からも足を延ばしてくれる人も増えた。宿泊には諸外国からも訪れてくれるようになりつつある。とはいえまだまだ小さな第一歩。神山町のような姿には遠く及ばないが、地域で生まれたつながりの中で、この先に続く未来をデザインすることにワクワクしている。
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