本が連れてきてくれた場所
大垣書店 中澤めぐみ

気付けば、書店で働いて20年以上。人生の半分以上を本に囲まれて過ごしてきました。
生まれ育ちは周りを田んぼに囲まれた田舎で、当時の娯楽といえばテレビ、映画、音楽、ファミコン、本にほとんど限られていました。この幼少期から青春期の時間で今の仕事にも繋がるインドア趣味が完全養成されたのだと思います。
学習雑誌、友だちと別個で買って交換して読んだ漫画雑誌、学校の図書室、地域の図書館で借りた児童文学。中学1年で初めて買った当時テレビで夢中になってみていた文庫本。
そんな中でも「ここから人生の先が変わった」と思える1冊があります。高校生のころ、年の離れた従兄に進められた司馬遼太郎の『燃えよ剣』です。
今もなお押しも押されぬ書店平台の定番商品で新選組小説の代名詞的作品。『燃えよ剣』で描かれた土方歳三の一本気で、冷徹さもあるのに近藤勇への愛着、弟分である沖田総司への甘さ、恋人への情の深さ、表からは完全無欠に見えるのに寂しさを抱えつつ、時代の移り変わりとともに崩壊していく新選組で、一人武士として意思を貫く姿に夢中になりました。私の中のヒーローといえば土方歳三と植え付けられた気がします。さらに今思えば、いわゆるキャラ萌えに目覚めたきっかけの1冊でもあるのではないかと…。そこからはもう沼も沼。子母澤寛の『新選組始末記』『新選組異聞』をはじめ新選組をテーマにした小説を読み漁り、読んでいくうちに幕末時代そのものにも興味の幅が広がり、今でいう聖地巡礼をするほどに。高校が京都市内というのがよかったのです。放課後は壬生寺、寺田屋跡、新選組ゆかりの場所へ。運のいいことに、好きな本の貸し借りをしていた仲のいい友だち3人がみんなそれぞれに新選組にハマったもので聖地巡礼も加速すること。卒業旅行は函館五稜郭へ行った筋金入りです。
いやぁ…本当に若さって、向こう見ずで、自分で言うのもはばかられますが、我ながらなかなかいい青春送っているなぁと思います。
この青春時代の延長で出会った浅田次郎『壬生義士伝』の感想を面接で熱弁したことでペーパーテストは振るわなかったにも関わらず、「本が好きなのは伝わった」とT店長に拾ってもらい書店員になることができました。本を読むことで気分を変えたり救われたことはそれまでもありましたが、就職難だったこともあり、「本に人生救われた」と感じました。
最初の会社や店舗での経験やそこで出会った人たちのおかげで、勤める会社や店舗、業務内容は変われどありがたいことに今も細々と書店の仕事を続けていられます。
本との出会い、人との出会い、全てのご縁に感謝しきりです。
できることならば、この先の人生も、夢中になって紹介し合って、あちこち飛び回るくらい熱量と萌えを費やせる本に一冊でも多く出合い続けられることを願うばかりです。皆さんにも忘れられない一冊との出会いがありますように!よい読書を!
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取り戻す旅
