高田郁文化財団

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髙田郁をはじめ書店員さんなど本に関わる皆さんが選ぶ「一冊」をリレー形式で紹介いたします

私は、年末も押し迫った時期に、脳出血で倒れ救急搬送されました。脳外科医が当直だったのは不幸中の幸いでしたが、右半身は全く動かない身体になっていました。3週間後、回復期病院に転院。発病のショックも幾分か癒され、当初はリハビリで身体の動く箇所が出てくるのが嬉しくて、回復を疑いませんでした。しかし、現実は …続きを読む

 昭和40年代半ば。私の暮らす町には、まだ蒸気機関車が走っていた。小学校2年時の担任だったN先生は、その機関車に乗って学校に通っておられた。先生は大学を出たばかりの、涼やかな目をした美しい女性だった。  当時の私は内気で集団生活に馴染めず、そのことを先生も随分心配しておられたのだと思う。5年生の春休 …続きを読む