僕たちの未来に乾杯!
啓林堂書店 西田大栄

「この一冊」の記念すべき50回目に声かけいただいた時、ちょうどこの本を読み返した直後だった。最初に読んだのは中学生の時・・・。
僕は幼いころから病弱で小学校は休みがち。なかなか友達ができず、いつも一人で本を読んでいた。そんな自分を変えたくて中学受験をして中高一貫校に入学したが、やっぱりなかなか皆に馴染めず、でも今度こそ友達が欲しくて、明るく強くなりたくて、青春小説や恋愛小説を読み漁った。そしてこの本に出会い、登場人物の青春の日々に強く憧れた。高3最後のバスケの試合にかける情熱、授業をサボって映画を観たりパーティーを企画したり。ホントはダメだけど、お酒を飲んだりタバコを吸ったり、そしてたくさんの恋をしたり・・・。
いくら本を読んでもどうしたら自分は変われるのかわからず悩んでいた中2の冬に突然、担任の先生から生徒会の選挙に立候補するよう言われた。「いっぺん自分の殻を破って挑戦してみろ!」と。それで悩みに悩んでエイヤッと勇気を振り絞って立候補したらなんと!生徒会長になってしまった。生まれて初めて人前で演説をし、事前に考えておいた面白いことをいっぱい言ったら皆が投票してくれたのだ。こんな自分がいるのかと自身で驚きながらも、制服を廃止したり校内に自動販売機を設置したりと盛んに活動した。それで自信がついて高校では文化祭の実行委員になり、打ち上げでお酒を飲んでバカ騒ぎした。そう、この本のようになれたのだ!
そんな頃にはすっかり身体が強くなり、病院に行かなくなっていた。性格も明るくなり誰とでも話せて、生まれ変わったような心地だった。
そして今年50歳になり、10年ぶりに中・高の同窓会を開催した。皆、仕事が忙しく、子供の受験や親の介護で大変な年代。しかし束の間、そんなことはぜーんぶ忘れて当時に戻ってまたバカ騒ぎした。その時にふとこの本のことを思い出し、急に読みたくなって調べてみると少し前に復刊されていた!
すぐに取り寄せて一気に頁を繰ると、三十数年前の日々が鮮明によみがえった。あの頃は何も怖くなかったし何にでもなれる気がした。未成年なのに飲み会ばかりして、「未来に乾杯!」なんて言ってたっけ。
今の自分は、本と本屋を取り巻く環境の変化になかなかついていけず、体力が落ちて昔のようにガシガシとパッキンを運べず、白髪も増えてきて、こんなはずじゃなかったと思う日々・・・。
だがなんてことはない。この寄稿をきっかけに「まだまだこれから!」と思い直し、あのとき生徒会の選挙に出たように、もういっぺん殻を破って元気を出すぞ!
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足の裏を感じ、音が聴こえた
