私のリズム
さつき
思い返せば本に関わる時間をずっと過ごしていました。
家の近くにある本屋さんによく訪れて、とにかく店をぐるぐるまわって過ごしていたように思います。また、小学校は図書委員や新聞委員。中学生だったか、高校生でも図書委員。とにかく文字に関わり続け、そして現在は書店員として働いています。
どうして小さいときからこんなに本のある場所が好きなのか。よくわからないのですが、自分の知らない世界がたくさんあって、わくわくが止まらない。子どもながら、その空間がとても魅力的だったのだと思います。
森絵都さんの「リズム」は、私が中学生のときに出会った本です。
中学一年生のさゆきが主人公。少し年上のいとこの真ちゃんに恋心のようなものを抱いています。小さい頃から仲良く遊んでいるけれど、夢を追いかけるために真ちゃんは遠くに行ってしまう。色々な思いを経験して、大人になっていくさゆきたちの物語です。
なぜこの本を手にとったのかは忘れてしまったのですが、真ちゃんとさゆきとのお別れでの会話がとても心に響いたことを今でも覚えています。
当時の私は、人見知りで、おとなしいねとよく言われる子。そう言われるのが嫌で明るい子たちをうらやましく思い、自分が嫌いではないけれど、自分を否定されているような気がして、その度に落ち込んでいました。
自分のことにモヤモヤ。家のことでも悩みがある。
そんな私に「リズム」のその言葉は、心の奥の奥まで染み込み、涙が出そうになり、私の支えとなっていきました。
時は経ち、その言葉どおりに年だけをとってしまったなと感じます。人見知りの根っこはかわらないまま。くよくよ悩みがちなところも変わりません。色々なことが起こって、何もかも嫌になる日もあったけれど、「リズム」を思い出すと、中学生だったあのとき、「私は私で頑張っていこう」と前を向く自分がいたことを思い出し、いまの私を救ってくれます。
私は決して読書家ではありませんが、ずっと本に支えられて生きてきたなと思います。あるときは知的好奇心を満たしてくれたり、あるときはどん底に落ちていた自分を救ってくれたり、と、自分の人生にとってかけがえのない存在です。 そんな本をずっと残したい。人々に彩りを与えてくれる存在であってほしい。本よ、私のそばに、人々のそばにずっといてね。という想いで、これからもまだまだ知らない本と出会い、書店員として本を届けていきたいです。
- <次のコラム
- 前のコラム>
本なんて読んだことがなかった