今の自分があるのは
ジュンク堂書店 近鉄あべのハルカス店 椎崎佳子
「この一冊」いろいろ思い浮かべながら考えましたが、記憶にある最初に出会った本にしました。それは安野光雅「ふしぎなえ」です。多分自分で選んだのではなく母の選書だと思います。本当にタイトル通りふしぎな絵なんです。階段に上がっていると思っていたら上がれてない、アパートの部屋の壁と思っていたら違う方向から見ると床だったり、水道の蛇口からの水が街の川になりその先を見ると蛇口に戻ったりと。(言葉にするの難しい)そこに登場する小人達の表情豊かで個性的でおもしろく、夢中になっていろんな方向から何度も何度も見てました。言葉は無くとも物語を想像したりとまったく飽きなかったです。その後も「魔法使いのABC」「さかさま」「ふしぎなサーカス」の作品も楽しく見てました。
小学3年生頃からは漫画とアニメばかり見るようになり安野作品から遠ざかりました。絵を描くことが好きで美術を専門で学べる高校に進学した際、いろんな人との出会いにより今まで知らなかった事を学びました。特に先輩に「旅の絵本」を教えてもらったのをきっかけに安野さんの作品を見たり読んだりするようになり、その中でも算数や数学に関する絵本は子供の頃に見ていたら算数、数学が好きになっていたかもしれないと思うと当時の自分に教えてあげたいです。本を見るだけでなく展覧会があれば見に行きます。実際の原画はどれも素晴らしいです。原画と製本された本と見比べるのも楽しいです。特に「ふしぎなえ」の原画を見た時が一番感動しました。
将来の夢が漫画家から始まり、絵に関する仕事に就きたいと思い芸術短大まで行き、その時に友達に誘われ本屋のバイトに。読書家ではなかったけど本と本屋は好きでしたが、何より通学途中で行きやすかった。就職して学生バイトで終わるはずが就職氷河期で就けずで、仕事を探していたらたまたま本屋の募集あって雇ってもらい、店は変われどいつの間にかほぼ本屋人生のようになっています。思い描いてた通りではありませんでしたが、好きなコミック担当になれたしポップ書くのも楽しいし、自分の中では本と絵は似ていると思ってるので本屋の仕事は合ってると思います。
振り返ると絵や本を好きになったり今の自分があるのは「ふしぎなえ」がきっかけかなと思いました。本当に大切な一冊でこれからも楽しみ続けたいです。
- <次のコラム
権威を疑ってみる - 前のコラム>
『ノースライト』の光