【菅原道真】学者政治家の栄光と没落
宮脇書店大阪柏原店オーナー 萩原 浩司
皆さんは、『大阪ほんま本大賞』というものをご存じでしょうか?
正式名称は『大阪の本屋と問屋がほんまに読んでほしい本』と言い、これを運営しているのは、大阪の本屋と問屋の有志で結成した『OsakaBookOneProject』という団体なのです。
詳しくは、公式ホームページがあるのでそこを参照していただきたいのですが、その記念すべき第1回目の受賞作品が、高田郁さんが書かれた『銀二貫』(幻冬舎刊)なのです。
とにかく何を始めるのも第1回というのはとても大切で、この賞が広く世間様に認めていただき、その趣旨である『①まちの本屋を応援する ②児童養護施設で暮らす子供たちに本を届ける ③この目標に向かって、本屋と問屋と作家で協力していく』を祈願するために、大阪天満宮に参拝し、そしてその発表は天神祭りの日にしよう!となったのです。
ところで、昔から大阪の人々から『てんまのてんじんさん』と親しみを込めてそう呼ばれるこのお宮さんに祀られている菅原道真公は、
・なぜ神様として祀られるようになったのか?
・なぜ学問の神様なのか?
を皆さんはご存じでしょうか?
そんな疑問を解消しようと手に取ったのがこの本なのです。
いつもは新書が苦手な私なのですが、本書は一気に読み進めることができました。
菅原道真公が生きた時代は、平安時代の初期、西暦でいうと845年から903年の58年間です。そして神様として祀られるのが947年で、死後44年もたってからなのです。
しかも、死後に正一位太政大臣という当時に最高位の位も授けられるのです。
こんなに死後に奉られた人は、菅原道真公以外にはいないといっても過言ではありません。
その謎を解き明かしてくれるのが本書なのです。
読後の感想ですが、菅公が生きた時代は千二百年も前なのですが、その構造は現代社会と全く同じで、人々は出世を競い合い、足を引っ張り合い、妬み、嫉み、批判の嵐が吹き荒れ、流言によって真実が隠され、権力者に利用され、そしてその犠牲になったのが菅公だったのです。
神様になった菅原道真公は、その後長年にわたり広く人々から崇拝され、入試前にもなると多くの祈願者が訪れることになっていくのです。
宮脇書店大阪柏原店 オーナー
登録有形文化財萩原家住宅『茶吉庵』 十九代目当主
萩原 浩司