NO BOOKSTORE NO LIFE
東京堂書店 神田神保町店 佐瀬 芽久美
ありがたいことに「本屋さん」で働かせていただくという幸運に恵まれ、仕事柄「おすすめの本を教えて」「よほど本が好きなんですね」と言っていただくことが多い方かと思います。が!大変申し訳ないのですが、私はあまりたくさんの本が読めません!(そして漫画大好き人間です)多読・速読できる人に憧れ、おすすめの本がすぐ出てくるような活字中毒者になりたいっ!と歯噛みしながらン十年勤労いたしてまいりましたが、私にはまったく素養が無いようです。じゃあなんで「本屋」で働いてるのか?それは、ひとえに「本」よりも「本屋」が大好きだから、にほかなりません。仕事帰りに本屋に寄り、休日には本屋をめぐり、旅行先でも本屋に寄り道し、めったにいけない海外旅行に行っても本屋に行き、村上春樹『1Q84』が多面展開されていることに感動!しまくり、東に面白い本屋があるよ、と言われれば、新幹線で〇時間でも押し掛け、西に良き本屋ができたよ、と聞けば飛行機を使っても偵察に行く。この世に本屋という知識の宝庫が、私が生きている間にすべてを把握することは絶対に不可能な量の知識たちを、購入することも可能という素晴らしいシステムに、わくわくが止まらないのです。・・・ここまで読まれた方、うすうすお気づきかと思いますが、そうです。これは、「おすすめ本」を尋ねられた時の私の鉄板本「みをつくし料理帖」を紹介するという技が使えないために、困り果てた挙句の手前勝手な本屋愛を語ったなが~い前振りです。タイトルと紹介する本にも何の関係性もございません。伏してお詫び申し上げます。
気を取り直して、僭越ながら紹介させていただく本は『ジンメル・つながりの哲学』(NHKブックス968)です。著者の社会学者・菅野仁さんがG・ジンメルの学説を解釈した本で「社会という枠組みの中に人間が生きているのではなく、一人一人のコミュニケーションの集まりが社会なのだから、ただ一つの正解のコミュニケーションがあるのではなく、あなたにとって心地よい距離感での人間関係でいいんだよ」と言われたように私には感じられ、ほっとしたことを覚えています。のちに同著者はちくまプリマー新書より「友だち幻想」という本が大ヒットされるのですが、こちらから読まれるのもおすすめです。皆様にとっての「この一冊」に出会えますように。
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~愛と勇気が 友達さ~